前半の記事では仮説の目的とデータ活用のための準備について考察いたしました。
「仮説を立てる」というと、何となく身構えてしまう方もいるかと思います。その理由のひとつに「仮説の立て方がわからず、何となくやっている」というのがあるのではないでしょうか。
ここではそんな方の気持ちを少しでも軽くすべく、後半の記事では仮説を立てるための3つの手法、演繹法(えんえきほう)、帰納法(きのうほう)、アブダクションという考え方を用いた手法をご紹介いたします。
(演繹法と帰納法はよくロジカルシンキングの手法としても紹介されています。)
目次
- 演繹法を用いた仮説の立て方
- 帰納法を用いた仮説の立て方
- アブダクションを用いた仮説の立て方
- おわりに
1. 演繹法を用いた仮説の立て方
演繹法は一般的かつ普遍的な事実や法則を前提に結論を導く方法です。
「前提が正しければ必ず結論も正しい」という特徴を持ちます。
前提 | 割引クーポンを配布すると、新規顧客が15%増える |
推論 | 今月の目標は新規顧客の獲得である |
仮説(結論) | 新規顧客を呼び込むには割引クーポンの配布が有効だろう |
メリット | 前提が正しければ結論も正しいため、説得力が強い |
デメリット | 前提が真実かどうか検証するのに時間がかかる 前提に偏見や誤りがあると結果も誤ったものになる 情報が増えない |
導かれる結論の正しさが前提によって決まるところが諸刃の剣です。しかし前提がしっかりしていれば、あらゆる人が同じ結論にたどり着く手法とも言えます。
2. 帰納法を用いた仮説の立て方
帰納法は複数の事例に共通する法則を見つけ出し、それを元に結論を導く方法です。「データ活用」というと、このようなイメージを抱いている方も多いのではないでしょうか。
事例① | 東京で割引クーポンを配布したら、新規顧客が10%増えた |
事例② | 名古屋で割引クーポンを配布したら、新規顧客が15%増えた |
事例③ | 博多で割引クーポンを配布したら、新規顧客が20%増えた |
共通点 | 都市部で割引クーポンを配布すると新規顧客が増える |
仮説(結論) | 大阪でも割引クーポンを配布すれば、新規顧客が増えるだろう |
メリット | 客観的データを提示することで、説得力を持たせることができる 統計を利用することで素早く予測をすることができる |
デメリット | あくまで統計論であるため、必ずしも全ての事象に当てはまるわけではない 仮説を立てるためにある程度の知識/経験/データが必要 |
ビッグデータのあらゆるデータを解析し、法則を見つけ出して活用する、というのは帰納法的考えなのではないかと思います。「長年の勘や経験に基づいて炭の火入れ時間を調整する」といった職人技も、帰納法的手法と言えるかもしれませんね。
3. アブダクションを用いた仮説の立て方
演繹法と帰納法が結論を導く方法だったのに対し、アブダクションは仮説を導くための方法です。結果に対し法則を当てはめ、その結果が生じた理由を合理的に説明できる仮説を導きます。
結果 | 新規顧客が増えた |
推論 | 割引クーポンを配布すれば、新規顧客が増える |
仮説(結論) | 新規顧客が増えたのは、割引クーポンを配布による効果だろう |
メリット | 結果が生じた筋道にどんなものが考えられるか、可能性を広げられる また可能性が広がることで、ロジックの精度も上がる |
デメリット | 生じた結果に対する観察力、ひらめき、想像力が必要 突発的な考えに説得力を持たせるスキルや経験/知識が必要 |
他の二つの手法に比べ発想が重要となりますが、情報を絞るというよりは広げやすい手法なので、アイデアを出す場面では使いやすいかもしれません。
4. おわりに
前半の記事では仮説を考える目的、後半の記事では仮説を立てるための3つの手法をご紹介しました。
仕事をする上で「ここは演繹法で考えてみよう」と思うことはなかなかないと思いますが、実際は無意識的にこの3つの手法を組み合わせて使っているのではないでしょうか。
例えば最初に挙げた新商品の例は、以下のようなプロセスに分解できます。
- 新商品を売るアイデアとして「今まであまり商品を購入がなかった20代の女性をターゲットにするのがよいのではないか」という案を出す
- (アブダクションを用いて新商品のターゲットを仮定する)「20代女性に好まれるものなら売れるだろう」という仮説に対しデータを集め、「20代の女性は○○ということに関心があるので、△△をコンセプトとした商品がいいのではないか」という案にまとめる(帰納法でアブダクションの発想を補強する)
- 「年に一度新商品を発売しなくてはならない。その状況で新しい購買層の獲得はメリットが大きい。よって20代女性をターゲットとしたこの案にはメリットがある」と考えて結論を出す(演繹法的発想でで結論を出す)
ここでは長くなるのでざっくりとした書き方になってしまいましたが、上記のような場面は日常に溢れています。
一方で様々なデータが簡単に集められる今日においては、目的を考えずともデータを集めることができてしまいます。
仮説を立て、何に使いたいのか目的を意識しながらデータ収集をすることで、さらに効率の良いデータ活用をしていきたいですね。

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